高等学校において、第二学年を対象とした租税教室の講師をした。当日は雪混じりの小雨が降る寒い日であった。会場はストーブが数台あるのみの講堂なので、生徒達はなおさら寒い思いをしたであろう。
私は、偶然にも当校の卒業生であったため講師として声をかけていただいた。思えば卒業して以来一度も当校に訪れることなく24年が経っていた。そのため懐かしみと喜びが沸き起こり、微力であろうが租税の在り方を伝えることを決心した。
準備は、日税連の租税教室資料及び平成12年の政府税制調査会答申「わが国税制の現状と課題−21世紀に向けた国民の参加と選択−」を参考とした。特に後者の答申は、租税の在り方を教育する目的や根拠が論述されている貴重な情報であった。小中学校を対象とする租税教室と違い台本がないので、自らテーマと進行を考える必要があったが、この答申のおかげでその両方を手に入れることができた。
テーマは「税と民主主義」とした。進行は「なぜ税金が必要か」という問いから「民主主義の根幹である」ことに着地させることとした。
先輩税理士との貴重な打ち合わせの後、イメージトレーニングを十分にして当日に臨んだ。
当日、生徒と教師を含めて約320人集まった。50分間準備通り話し通したが、卒業生としての気持ちが抑えきれず人生観等の語りが多くなり、時間が足りなくなったことは反省に尽きる。また、アンケートによれば理屈に偏りすぎだったことも判明した。その一方で、税と民主主義の関係が新鮮な発見だという感想もあったことは嬉しい限りである。今は、高等学校租税教室が今後も継続することをひたすら願うのみである。